こんにちは、阿久梨絵です!
キーボードの右下──
Enterには、左向きの矢印が描かれています。
↩ ←この記号、見慣れてはいるけれど、ふと立ち止まるとこう思いませんか?
「なんで左向きなの?」
「押すと右に進むのに、矢印は左?」
「これって、何か意味あるの?」
Enterの矢印は、現代の操作感覚とは逆を向いている──
それは、UXが“過去の象徴”をそのまま残してしまった例かもしれません。
この矢印、何を意味しているのか?
実はこの左向き矢印は、タイプライター時代の「キャレッジリターン(Carriage Return)」の名残です。
・タイプライターでは、行末に達するとレバーを左に戻して改行していた
・この動作が「キャレッジ(紙送り機構)を左に戻す」ことだった
・Enterは、その動作を模した「改行・決定」の象徴として、左向き矢印を継承した
つまり、↩は「改行=左に戻る」だった時代の記号なのです。
なぜ今も残っているのか?
現代のキーボードでは、Enterはこう使われます。
・改行(テキスト入力)
・決定(フォーム送信、操作確定)
・実行(コマンドの実行)
でも、どれも“前に進む”操作。
それなのに、矢印は“戻る”方向を向いている──
これは、UX的にこうした問題を生みます。
| 問題 | 内容 | UX的影響 |
|---|---|---|
| 記号と動作が逆 | 押すと進むのに、矢印は戻る | 直感に反する |
| 意味が説明されない | 矢印の由来が不明 | 学習されないまま放置される |
| 象徴が形骸化 | 使われる理由が失われている | デザインの惰性になる |
結果として、Enterの矢印は“意味が分からないけど、ある”記号になってしまっているのです。
象徴は、意味を伝えているか?
UX設計において、記号やアイコンは“意味を伝えるための言語”です。
それが、使う人の感覚とズレていると、こうした違和感が生まれます。
・「なぜこの記号なのか?」
・「この動きと一致しているか?」
・「使う人に説明されているか?」
Enterの矢印は、“歴史の記号”が“現在の操作”に合っていない例。
それは、UXが“慣れ”に依存してしまっている構造でもあります。
解決のヒント:記号に意味を取り戻すか、更新するか
Enterの矢印をどう扱うか──それは、設計思想の選択でもあります。
1. 意味を取り戻す
・ツールチップやガイドで由来を説明
・教育的な文脈で「キャレッジリターン」の歴史を伝える
・デザインに“物語”を添える
2. 意味を更新する
・より直感的な記号に置き換える(✓や→など)
・操作と一致するアイコン設計にする
・UI全体で記号の一貫性を保つ
UXとは、使いやすさだけでなく、使う人の理解と納得に寄り添う設計。
Enterの矢印に意味を与えるか、更新するか──
それは、象徴と機能のバランスを問い直すことなのです。
まとめ
Enterの↩は、
かつては「改行=左に戻る」だった時代の記号。
でも今や、それは“前に進む操作”に逆向きの記号が添えられている”という違和感。
UI設計において、
記号は意味を伝える言語。
その言語が、使う人の感覚とズレているなら──
それは、UXが過去に縛られているサインかもしれません。
Enterの矢印に、意味を取り戻すか、静かに手放すか──
その選択が、設計の美学と信頼を育てる第一歩なのです。
阿久梨絵でした!

