AI は「橋」と「箸」をどう見分ける?自然言語処理が挑む日本語の壁

こんにちは、阿久梨絵です!
「はし」と聞いたとき、それが「橋」「箸」「端」のどれを意味するかを、私たち人間は文脈から自然に判断しています。たとえば、「川にかかるはし」は「橋」「ごはんをたべるはし」は「箸」といった具合です。しかし、 AI にとってこの違いは容易ではありません。なぜなら、日本語には同音異義語が非常に多く、文章中の“音”だけでは意味を判別できないからです。

AIはどうやって意味を見分けるのか?

AIがこれらの言葉を見分けるには、主に以下のようなアプローチが使われます。

1. 文脈解析(コンテキストベース)

現代のNLPモデル、特にBERTやGPTのような文脈重視型の言語モデルは、単語そのものではなく、“その単語がどんな文章・単語に囲まれているか”を考慮して意味を判断します。

たとえば
・「お弁当を食べるときに使うはし」 → 箸
・「川にかかっているはし」 → 橋

モデルは周囲の単語から、もっとも自然な意味を予測するのです。

2. 形態素解析

日本語では単語の区切りがはっきりしていないため、まず文章を「形態素(最小単位)」に分解する必要があります。たとえば
「私は箸で寿司を食べた」
→ 「私」「は」「箸」「で」「寿司」「を」「食べた」

この段階で、「箸」という単語が単独の意味を持つことを解析エンジンが特定します。

3. 音声文脈+イントネーション(音声処理の場合)

音声認識AIが「はし」という単語を理解するには、イントネーション(高低アクセント)を読み取ることも重要です。

・「は↑し」(橋)
・「は↓し」(箸)

日本語はピッチアクセントの言語なので、発音の抑揚から意味を識別するのも1つの手がかりになります。

NLPにおける日本語処理のユニークな課題

英語圏の言語と比べ、日本語には以下のような難しさがあります。

単語境界が不明瞭(スペースが使われない)
同音異義語が多い
アクセントやイントネーションによって意味が変わる
漢字・ひらがな・カタカナが混在

これらの特徴に対応するために、日本語処理には専用のトークナイザー(例:MeCab、Juman++)や、日本語特化の言語モデル(例:Cl-tohoku BERT)などが使われています。

まとめ

AI は、単語の意味をそのまま知っているわけではありません。その場その場の「文脈」や「発音の抑揚」「書き言葉と話し言葉の違い」など、さまざまな情報を総合的に処理して判断しています。

しかし、これが完璧とは限らず、特に短い文章や曖昧な表現では誤認識が起きやすくなります。そうした“弱さ”があるからこそ、AI研究者たちはより自然で正確な日本語理解に挑み続けているのです。
阿久梨絵でした!

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