こんにちは、阿久梨絵です!
ある人は「このアプリ、めっちゃ使いやすい」と言い、
別の人は「なにこれ、わかりづらい」と眉をひそめる──
同じUIでも、人によって“ 使いやすさ ”の感じ方がまるで違うのはなぜ?
今回は、脳科学・認知心理学・経験設計の視点から、
「 使いやすさ 」が絶対評価できない理由と、その“錯覚”にどう向き合うべきかを考えてみます。
「使いやすさ」は感覚か? 認知か?
“使いやすい”とは、具体的にどんな状態を指すのでしょうか?
・目的がすぐに達成できる
・操作の流れが自然で迷わない
・失敗してもリカバリーしやすい
・説明なしでも直感的に使える
しかしこれらの“評価軸”は、人によって重視するポイントが違います。
その背景にあるのが、脳の特性や“慣れ”による錯覚なのです。
「知覚のバイアス」がUX評価を左右する
| UX錯覚の例 | 内容 |
|---|---|
| 親近効果 | よく見るUIは“わかりやすい”と感じやすい(例:iPhoneと同じボタン配置=安心) |
| 初頭効果 | 最初に触れたときの印象が長く影響する(例:初期体験のUXが悪いと全部イヤになる) |
| 期待形成効果 | 想像と違う挙動で“使いにくい”と感じる(例:ボタンを押したら想定外の画面に遷移) |
| 記憶のバイアス | 前にミスをした画面は“難しい”印象として残る |
UX評価とは、感覚的というより“脳が感じた認知の快・不快”に基づくものなのです。
「使いやすさ」を狂わせる4つの要因
① 認知負荷の個人差
・高齢者や子ども、ITリテラシーの違いにより“読み取りやすさ”が変わる
・小さい文字・用語の専門性が“つまずき”を生む
② 習慣とのズレ
・Windows派とMac派でショートカットやUI期待値が違う
・AndroidとiOSでスクロール方向などが逆に感じられることも
③ 目的と状況の違い
・「急いで使いたい」ときと「じっくり設定したい」ときではUIに求めるものが変わる
・同じサービスでも“使う文脈”で評価は大きく変わる
④ デザイン美学への反応差
・「ミニマルで洗練されてる」→「なんにも書いてない…不親切」
・デザイナーと一般ユーザーの美的感覚にズレがある
ユーザーテストでも起こる“認識の違い”の罠
テスト参加者が「はい、わかりやすいです」と言っても、
実際には何度も確認クリックしている/画面を見渡していることも。
つまり、“本人の評価”と“実際の操作行動”が一致しないケースが多々ある
解決策
・言語化より操作ログ・視線・クリック経路の客観データを重視する
・主観評価と行動評価の両方をセットで分析する
まとめ
UXとは、使いやすさという“絶対的な尺度”ではなく、
使い手の脳が抱く“快”をどう引き出すかという設計の物語です。
ユーザーは“自分の使いやすさ”しか知らない
評価にはバイアス・脳の癖・環境差が常に影響する
だからこそ、“気持ちよく使える体験”を複数視点から設計することが必要
UXに唯一の正解はありません。
ですが、認知の違いを前提にした“思いやりある設計”は、誰にとってもやさしいUXをつくる第一歩になるはずです。
阿久梨絵でした!
