こんにちは、阿久梨絵です。
「ITゼネコン」という言葉を聞いたことはありますか?
これは、建設業界の“ゼネコン構造”になぞらえて、IT業界の多重下請け構造を皮肉った表現です。
そしてこの構造の中で、大手SIerのエンジニアが“ 技術力 のない手配師”と揶揄される現象が起きています。
なぜそんなことが起きるのか?
今回はその背景と構造的な問題を、現場目線で掘り下げてみます。
ITゼネコンとは?——多重下請け構造の実態
ITゼネコンとは、元請け(大手SIer)→一次請け→二次請け→三次請け…という多層構造のこと。
大規模案件(官公庁・金融・インフラなど)では、プロジェクトがこのようなピラミッド構造で進行します。
・元請け:顧客との折衝・契約・マネジメント
・下請け:設計・開発・テストなどの実作業
・孫請け:実装・テスト・ドキュメント作成などの末端作業
この構造の頂点にいるのが、大手SIerのエンジニアたちです。
なぜ“手配師”と呼ばれるのか?
1. 実装をしないから
大手SIerのエンジニアは、実際にコードを書くことがほとんどありません。
彼らの主な業務は、要件定義・進捗管理・ベンダー調整・会議体の運営など。
つまり、「人と資料を動かす」ことが仕事になっているのです。
2. 技術判断ができないケースもある
技術的な意思決定を迫られても、実装経験が乏しいために判断できない。
結果として、下請けに「どう思いますか?」と丸投げする場面も。
3. “パワポ職人”化している
提案書・報告書・議事録・WBS…。
PowerPointとExcelが主戦場になっており、技術よりも“資料力”が評価される文化が根付いています。
それでも彼らが“上流”にいる理由
では、なぜそんな彼らがプロジェクトの上流にいるのでしょうか?
・顧客との契約を握っているから
・リスクを負える資本力があるから
・政治的な調整力が求められるから
つまり、技術力よりも“組織力”と“信用力”が評価される構造なのです。
技術力が育たない構造的な理由
・分業化の進行:設計・開発・テストが完全に分断され、全体像を把握できない
・パッケージ導入の増加:スクラッチ開発が減り、パラメータ設定だけで済む案件が増加
・育成機会の欠如:若手がコードに触れる機会が少なく、技術的な“筋肉”が育たない
結果として、“技術を知らないマネージャー”が量産されるという現象が起きています。
それでも“大手”に価値はあるのか?
もちろんあります。
・巨大案件を動かすマネジメント力
・顧客との信頼関係
・社会インフラを支える責任感
ただし、技術者としての成長を望むなら、別の選択肢も視野に入れるべきです。
まとめ
「 技術力 が乏しい手配師」と揶揄されるのは、個人の問題ではなく構造の問題です。
でも、その構造の中でどう振る舞うかは、自分で選ぶことができます。
・技術を磨きたいなら、現場に近い環境へ
・マネジメントを極めたいなら、大手での経験も価値がある
どちらも正解。
ただし、「自分がどちらを目指すのか」を見失わないことが、キャリアの分岐点になるのです。
阿久梨絵でした!