「人を増やせば早く終わる」は幻想?── ブルックスの法則 に学ぶ開発の落とし穴

こんにちは、阿久梨絵です!
今回は開発現場でよく聞く悩み
納期がヤバい、じゃあ人を増やそう」という選択に本当に意味があるのか?
——そんな疑問に答えてくれる ブルックスの法則 をご紹介します。

ブルックスの法則とは?

「遅れているソフトウェアプロジェクトに人を追加しても、完成は早まらず、むしろさらに遅れる」

この法則は、1975年に出版されたフレデリック・ブル Brooks の著書『人月の神話(The Mythical Man-Month)』の中で提唱されました。

当時も今も、プロジェクトの遅れに対して“人員追加”という解決策が安易に選ばれがち
しかし、ブルックス氏はそれが逆効果になる理由を、こう指摘しています。

なぜ人を増やすと遅れるのか?

1. オンボーディングコスト

新しく加わった人に対して、既存メンバーが状況説明・教育を行う時間が必要になります。
その結果、既存の作業がさらに遅延します。

2. コミュニケーション負荷の増加

関わる人が増えることで、情報共有や意思決定にかかる時間が指数関数的に増えます
たとえば2人→3人で必要なコミュニケーションのラインは3本→6本と倍増

3. 作業の分割が難しい

ソフトウェア開発のような複雑なタスクは、簡単に分割・並列化できるとは限りません
分けられない作業に無理に人を当てても、かえって混乱の元になります。

活用法:「足す」よりも「整理する」

遅延対策は「人を増やす」より「今あるタスクを見直す」ことが重要です。

優先順位の再整理

「すべてを完璧に」よりも、「最も重要なことを確実に」進める。

スコープの見直し(スコープクリープの防止)

初期の要件に立ち返り、本当に必要な機能に集中

ボトルネックの明確化

遅れの原因が「人手不足」ではなく、「意思決定の遅延」「仕様のあいまいさ」であることも多々あります。

コミュニケーション設計の最適化

会議頻度、ドキュメント形式、レビュー体制の見直しが、スムーズな進行を助けます。

応用:現代開発でも通用する考え方

ブルックスの法則は40年以上前に提唱された理論ですが、アジャイル開発・リモートワーク・グローバルチームといった現代の開発体制においても、強い示唆を持っています。

・スクラムやカンバンなど、スモールチーム×タスクの見える化を前提とした手法
・少人数でも自律的に動けるチーム設計の重視
ドキュメント・ナレッジ共有の仕組み(Notion、GitHub Projectsなど)の整備

これらの潮流も、ブルックスの法則と親和性が高いのです。

まとめ

「人を増やせば、なんとかなる」——その発想が危ういことを、ブルックスの法則は明快に教えてくれます

真の対策は、いまあるリソースの中で何が最も効果的かを見極める視点にあります。
プロジェクトが遅れたときこそ、“数”よりも“仕組み”に目を向けることが、実は最短ルートなのです。
阿久梨絵でした!

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