「 ん 」はどこから来たのか?──日本語で最も不思議な文字のルーツを探る

こんにちは、阿久梨絵です!
今回は、五十音の中でも異彩を放つひらがな「 ん 」の正体に迫ります。
見た目も音も独特な「ん」は、いったいどこから来たのか?
そのルーツを、漢字・音声・歴史の3つの視点から解説します。

「ん」は五十音に“なかった”文字だった

実は「ん」は、五十音図の原型には含まれていなかった文字です。
平安時代以前の日本語では、「ん」に相当する音は「む」「う」「い」などで代用されていました。

「ん」が独立した文字として定着したのは、平安時代末期(12世紀ごろ)。
それまでは撥音(鼻音)を表す手段がなく、表記も発音も曖昧だったのです。

平仮名「ん」のルーツは漢字の「无(む)」

「ん」は、漢字の「无(む)」を草書体に崩した形から生まれたとされています。
「无」は万葉仮名で「む」を表す文字の一つであり、
そこから派生して「ん」という撥音専用の仮名が誕生しました。

つまり、「ん」は「む」の変化形とも言える存在なのです。

片仮名「ン」の由来は諸説あり

片仮名の「ン」には複数の説があります。

漢文訓読で撥音を示す記号(梵字の「菩提点」由来)
漢字「尓(じ)」の上部
「无」の一部を取った形
「二」や「冫(にすい)」の変形

いずれも、撥音を視覚的に表すための記号的な工夫から生まれたと考えられています。

「ん」の発音は1つじゃない?

「ん」は見た目は1文字ですが、発音は文脈によって5〜6種類に変化します。

後続音発音例音声記号説明
バ・パ・マ行さんぽ[m]両唇鼻音
タ・ダ・ナ・ラ行ほんだ[n]歯茎鼻音
カ・ガ行まんが[ŋ]軟口蓋鼻音
ヤ・ワ・ア行などほんや[ɰ̃]鼻音化した接近音
語尾・単独パン[ɴ]口蓋垂鼻音

このように、「ん」は日本語で最も多様な発音を持つ文字とも言えるのです。

まとめ

「 ん 」は、五十音の中で唯一の撥音であり、漢字「无」から派生した“音の記号”としての仮名です。
その発音の多様性と、表記上の特異性から、「ん」は日本語の中でも最も興味深い文字のひとつと言えるでしょう。
阿久梨絵でした!

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